その優しさは反則なんだ
彼があの曲を歌わなければ、私がその曲を好きじゃなければ、生まれることのないものだった。
だけどその存在を心地よく幸せと思う気持ちよりも、友達に軽蔑されたくないという気持ちの方が大きかった。
もしなにか動いたら自分の気持ちが逸ることが誘惑に負けそうなことが怖くて、一面も動けなかった。だから何もしなかった。
その一方で、この平衡を壊すのが嫌だった。なにか決定的な方向が生まれるのが嫌だった。
淡い期待のままにしておきたかった。それは行使されることはないことは分かっているけど。